I=D志望の成り立てWIZイルトと、D先行型支援プリユノーのお話。
成り行きで加入したギルド。たまり場に顔も出さずひとりソロ狩りに励むイルトは、
ギルド所属プリのユノーに捕まり、顔を出さないことを責められる。
付き合いの悪いウィザードと、おせっかい焼きなプリーストのお話です。
※両者共男性のプリ→WIZ風味のお話になっていますので、苦手な方はご注意下さい。
おうちに帰ろう * RAG-FES23頒布予定の内容です(WEB用に改行しています)
「なーんて冗談。さて、もう遅いし帰ろっか」
そう言って立ち上がるとユノーは右手で衣装の裾を払い、欄干に腰掛けまま彼を見上げるイルトに左手を差し出す。
その手を振り払ったのは、素直にとるのが気恥ずかしかったからだ。
気づいたときにはもう手遅れで、気まずくて、視線を合わせること無く欄干から飛び降りた。
少しだけ残念そうに彼は息を吐き出し、右手を耳元に持っていく。それから首を少し傾けて、
「気にしないで。さっ、ポタだすから乗っちゃって」
短い詠唱と共にブルージェムストーンが砕け散り、ワープポータルが展開される。それを確認すると、にこりと笑って彼は言った。
「さぁ、おうちに帰ろう」
* * *
イルトが振り返った先、腕を組んで立つのはプリーストの青年ユノーだった。
彼の胸元にも同じギルドのエンブレムが光っている。長い金髪をポニーテールにした男は、珍しく怒ったような表情を浮かべていた。
「顔合わせるの何日ぶり?」
「別に毎日顔合わせるとか、そんなルールないだろう」
「だからってここ十日ずっと戻ってないだろう。みんな心配してる」
怒鳴るのはではなく、抑えつけたような淡々とした喋り方に反論できず、思わず押し黙ってしまった。
イルトがそのギルドに誘われたのは二月ほど前、監獄行きのパーティでユノーと一緒になったのがきっかけだった。
決して強引な勧誘ではなかったものの、断るに断れず――今から思えば人恋しくもあったのだろう、しばらくして抜ければ良いやと流されて加入へ至った。
その点は自分が悪いとの自覚も、イルトにもあった。
ル・シエルという名前のそのギルドは、退魔プリーストの女性をギルドマスターに据え、
勧誘者の支援プリースト・ユノー、アルケミストのイサナ、他に騎士とハンターの男性が二人と女性セージといった
メンバー六人で構成された小さなギルドだった。
ギルドマスターの持ち家を拠点としたそのギルドは、メンバー間の仲も良く、居心地の良いものだった。
それだけに、その空間にいることが耐えられなくて、狩りだから、クエスト中だから、或いはレベルがもうすぐ上がりそうだからと、
様々な理由をつけて、ギルドハウスにはなるべく近づかないようにしていたのだ。