キミの隣で
地裏のエルと地表のアーク。
隣にキミがいてくれればいいのにと思う瞬間。
そんな、少しだけアーク×エル風味な短いお話です。
遮るもののない空はどこまでも青く澄んでいて、遠い水平線の彼方で海と交わる。
太陽の光は地裏のそれとは比べものにならないほど眩しく、そして暖かく、草原を吹き渡る風にはかすかに草の匂いが混じっていて。
地裏ではなかったその光景を目に、時々彼は思うのだ。
今、この隣に彼女がいたら、と。
「どうしたんだよ、黄昏ちゃって」
「別に何でも」
「なんだなんだ、さてはエルに会いたいのか?」
「悪いかよ」
面白がるような相棒の口調に、思わずむっとした。
「一度も帰ってないから、村のみんなとかその……エルにも会いたいとか思うさ」
少しだけ口籠もった答えに、ヨミはふふんと楽しそうに笑って言う。
「ま、そのうち会えるんじゃないか? 世界はこんなにも、復活したんだから」
「そうだよな、そのうち会えるよな!」
旅立った時、どこまでも広がるかと思えた荒野は今や草原となっていて。
かつて、村の長老がアークに言ったことを思い出す。
長老はクリスタルホルムの村人たちを地表に住まわせたいのだと、あの日告げた。
荒れ果てた大地を見たときは、こんな場所を復活させようだなんて無茶を言うものだとアークは思った。
けれど緑あふれる大地を見たとき、たしかにみんなでここに住めたらとも思ったのだ。
「エルが見たらなんて言うだろうな」
太陽の眩しさに手をかざし空を見上げて、アークはぽつりと呟いた。