勝敗の行方
お互いが今手にしている得物は、使わなくなって久しい。
自分たちの命を預けていた相棒とも呼べる武器は結局手放せず、倉庫の片隅で埃を被っていた。
かつては同じ銘が刻まれていた海東剣。
製作者は引退したのか死んだのか――不明のまま、名のあった場所に亀裂が走っている。
なけなしの財産で購入した、揃いの武器だった。
久々に手にするはずの剣は思いのほか、しっくり馴染む。
「覚悟はいいか」
呼びかけに、眼前の少年は、金髪を揺らして肯定する。
「ニュマが消えたら開始で。――両者構え」
マスターの声と共に、中間地点にニュマが置かれた。
支援もアイテムもスキルもなし。
ただただ、単純な剣の打ち合い。
それが、この勝負のルールだ。
少年――ユノーは、剣士として叩きこまれた模範的な構え。
こちらもそれに倣い、抜刀し構えた。
ニューマが消えたと同時に間合いを詰める。
上段から振り落とした一撃を、奴は刀身を上手く使い、いなして距離をとる。
ハッという声と共に、下段からの切り上げ。それは鍔迫り合いに持ち込んで抑えつける。
「現役舐めんな」
「そっちこそ甘く見んな」
互いに笑い、後方へ飛び距離を再度とる。
再度踏み込み、一合、二合と打ち合いを重ねていく。
どこへの切り込みの対処が苦手だとか、何が得意なのか、とか。
お互いの癖はどちらも把握している。
切り込み、受け流され、切り込まれ、競り合い、距離をとる。
いつまでも続きかねないやり取りの中、わざと、よろめいたように隙を作った。
予想通り隙を逃さんとばかりに切り込んできて
「ばーか」
一撃を叩き込み、剣を手放させ、切っ先を突き付けた。
「まだ、がんばる?」
「くっそー、まいりましたー」
心底不服そうなユノーの声に、笑って剣を引いた。
「あーもう、最悪、悔しい! わざとかよ」
「簡単に隙見せるかアホ。まぁ楽しかった、お疲れ様」
お互い肩で息をしながら相手を労う。
剣を鞘に収めて手を伸ばせば、
「シエルもおつかれ」
と、ユノーも伸ばしてきて、握手する。
ぱちぱちと観戦者のギルメンたちから疎らな拍手がとんだ。
「あーでもよかった、すっきりした」
ユノーは、落とした剣を拾い労うように柄へ口づけ笑う。
「あれって剣士時代だから何年だ……」
「だいたい五年ぶりってとこかな? 逃げてやり合えなかったし、ありがとう」
そう言って、頭垂れる彼に、俺も姿勢を正し頭を下げた。
「いや、こっちこそ。有難う」
かつて剣士時代、俺はこいつと模擬戦で対峙した。
もしもあの日あたらなければ、今も聖堂騎士団としてこいつと肩を並べていたかもしれない。
当人は自分が弱かったからだというけれど、もしもの未来が惜しかった。
「また、やろう」
言ってやると、
「こっちこそ是非!」
次は勝つと宣言に、自然笑みが溢れた。
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砦内でシエル視点、vsユノー。
ユノーはかつてソードマンとしてシエルリッドと肩を並べていた。
けれど訓練中に剣を握る覚悟がなかったことを自覚して、剣を置いたのでした。
2013/04/12
4/3 Twitter投稿分より、追加修正等
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