ユノーののろけ と、犠牲者シエル
「それどうしたん?」
転生祝いにと両親からもらったらしいロザリオではなく、真新しいロザリーが下げられた胸元。
何となしにそう訊ね、シエルリッドが気づいた時にはもう手遅れだった。
「羨ましいでしょ?」
ユノーが指し示す胸元では、ロザリーと一緒にダイヤの指輪が銀鎖に繋がれ揺れていた。
「例のイベントのやつか」
「そうそう」
先日始まったクリスマスイベントで、指輪やロザリーに名入れサービスが行われているらしい。
確かにギルドの連中でも、恋人や夫婦で作ったと見せびらかしてる奴らもいたものだけど。
目の前のこいつも、例外ではなかったらしい。
ユノーは真紅の双眸を嬉しそうに細めて、左手で指輪とロザリーを握りこむ。
「僕の好きな人が! 僕のために! 作ってくれたんだよ!」
「……お前「シエル聞いてよ!」
そこから始まるのはもう、爆発しろと思うような発言ばっかりだ。
曰く、
「一緒に狩りに行ったんだけど、戦う姿すっごく格好良いんだ!」と拳を握って力説。
「あんまり甘えてくれないけど、たまにくっついてくれたり、裾ひっぱったりしてきたりとか」と頬を染めて惚気る。
あとはただひたっすらに、恋人の事を可愛いだの大好きだの言い続けた。
「あー、満足した」
まだ湯気を立てていたはずのコーヒーは、既に冷たくなっている。
それだけ吐き出しゃ、満足もするだろう。
「ふふふ、僕のこと羨ましい? シエルも恋人作ったらいいんだよ? いくらでも惚気聞いたげる」
店員におかわりを二つ頼んだユノーはにやにやと笑ってそう言いやがった。
「生憎、仕事やギルド関係で自由な時間があんまりなくてな」
その貴重な時間で、こいつの惚気をなんで聞かないといけないんだって。
「しっかし『僕』ねぇ。そんなカワイイ性格じゃないだろお前」
「ギルド抜けてから色々あったもんで、猫被るのも大変」
運ばれたコーヒーに口をつけて、
「ホントは、どこかに閉じ込めて俺だけをずっと見て欲しいくらいなんだけどね」
満面の笑みでそう言い放った。
「お前に好かれてる人、めちゃくちゃ大変だよな……同情するわ」
「仕方ないよ、可愛いんだから」
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2012/12/19
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